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蛍光測定によるUV硬化型樹脂の硬化度と架橋度の測定

蛍光を用いてUV硬化樹脂の硬化度架橋度を測定

 

近年、UV硬化樹脂の進歩と共に多種多様な工業製品に利用展開されるところであり、環境対策としての脱溶剤化、品質レベルの向上、生産性のスピードアップ等の目的で使用量の拡大が続いています。

 

UV硬化樹脂によらず、接着剤が硬化したかどうかを確認するための接着強度検査、硬度検査はいずれも抜き取りによる破壊検査、若しくは破壊しない程度の力で押してみるなどの手法が取られています。

 

FTIRなどの装置による化合物の組成を確認する方法もあるものの、日常の生産ラインで高価な装置を置き、習熟した専任者を置いて確認するというようなことは現実的ではありません。

 

国際的競争力を保ち、高品質の製品を供給し続けるには、歩留まりを抑え、製品コストを下げる必要があります。

 

いままで、硬化しているであろうという推測、あるいは過剰照射による非生産的な管理をしていた工程を、見える管理に変える必要があります。どのようにすれば見える化できるのでしょうか。

 

蛍光という光による手法を用いればUV硬化樹脂の硬化度、架橋度を測定する事ができます。

これができれば、連続的に生産されるフィルム等の薄膜材料にラミネートされたUV硬化樹脂の硬化状態を非接触で検査もできるということになります。

 

1.測定原理と特徴

 

UV硬化法では、紫外線照射前は主に液体であり、照射後においては固体に変化するUV硬化樹脂が用いられます。

 

このような樹脂は、主剤としてモノマーおよびオリゴマーを含み、さらに光重合開始剤を含んでいます。

光重合開始剤は、照射される紫外線を受けてラジカルやカチオンを発生し、モノマーやオリゴマーと重合反応します。

この重合反応に伴い、モノマーやオリゴマーはポリマーに成長し、極めて分子量が大きくなると共に融点が上昇します。

 

この結果、UV硬化樹脂は液体状態から固体に変化します。モノマー及びポリマーは一例として、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコンアクリレート、エポキシアクリレートなどからなる。

 

モノマーは単量体とも呼ばれ、主に樹脂液体の希釈剤として使われます。一方、オリゴマーは重合度が2~20の比較的重合度の低い状態のもののことを指します。光重合開始剤は、紫外線を受けてラジカルを発生するラジカル重合開始剤、および紫外線を受けてカチオンを発生するカチオン重合開始剤に大別されます。

 

UV硬化樹脂は紫外線を受けて重合反応を生じる事で硬化するように構成されています。そのため、このような重合反応を生じさせる光重合開始剤は、

  1. 重合反応を開始させるための活性種(ラジカルや酸など)を生成する能力(量子収率、モル吸光係数)が高い
  2. 反応性の高い活性種を生成する
  3. 活性種の生成能力を発揮するための励起エネルギーのスペクトル領域が紫外線領域である

すなわち、光重合開始剤は、紫外線を吸収し易い分子構造のものが採用され、紫外線吸収によるエネルギーを他の分子に与えやすいものとなっています。

 

異なる芳香環が接近するとπ電子同士が引き合って、ちょうど瓦を重ねたように、芳香環が重なり合うことをπ―πスタッキングといいますが、こうなることπ電子はさらに広い範囲に共役する事が出来るようになり、蛍光波長は長波長側にシフトします。

 

ただし、このπ―πスタッキングは、非常に小さな力での結合であるため、普通の溶液状態では、少しの熱運動で離れてしまいます。要するに溶液状態ではついたり離れたりしていて光学的に観察すると、わずかな蛍光しか見られないことになります。

 

しかし、液の粘度が上昇し固体化すると、スタックした状態で固定化されるので、より強い蛍光が観察されるようになります。

 

UV分解性の開始剤を用いた場合、芳香環を持った開始剤は分解され、ポリマー末端(正しくはポリマーネットワークの一部)に付着し、やがて液粘度の上昇とともに、この末端についた芳香環はスタックし始め、蛍光が強く出るようになると考えられます 。

 

これは現象として液体から固体に変わると、スタックがホールドされるので、ゲル化点(液体から固体に変わる点)を過ぎたころから、急激に蛍光が強くなるためです。液粘度が少し変わる(上昇する)だけでも、スタックされてホールドされる時間が長くなるので蛍光は強くなります。

 

蛍光が増加する過程を経過で記すと次のようになります。

  1. 硬化前            光重合開始剤が紫外線を吸収しやすい状態
  2. 硬化の為の紫外線照射開始   光重合開始剤が紫外線を吸収し、ラジカルやカチオンを生ずる
  3. 硬化             ラジカルやカチオンが紫外線硬化の主成分であるモノマーやオリゴマーに結合し重合反応が進む
  4. さらに紫外線を照射しつづける ポリマーの末端に結合した分裂後開始剤同士がスタックする事(ππ相互作用)により紫外線を照射すると、その部分から蛍光を放射する

この原理に基づき紫外線硬化樹脂の硬化度を推定すると、硬化の為の紫外線照射が開始されるとともに重合反応が進み、開始剤の消費と比例して溶液粘度が増大し蛍光放射も増大します。

紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤が消費され照射が終了すると蛍光放射の増大も停止します。実際は反応終了後、内部蓄熱、内部応力等の物理的エネルギーとの相関関係により蛍光放射はゆっくりとした増大カーブをえがき、やがて増大は止まります。

 

2.運用されている装置【UV硬化センサー Curea(キュレア)】について

UV硬化センサーCurea(キュレア)

UV硬化センサーCurea(キュレア)主な構成

生産工程での使用を前提としているので装置はセンサー部とコントローラー部に分かれております。

 

センサーからは微弱な紫外線(以下、検査用紫外線)が放出され、被測定物(UV硬化樹脂)から出る蛍光発光を捕捉します。

 

装置として必要な事は、硬化の為の紫外線(以下、硬化用紫外線)照射を行いながら硬化度を安定的に測定できることです。

また、検査用紫外線は樹脂を硬化させない微弱な紫外線である必要があります。

 

そこで、紫外線強度はMAX0.5mWと非常に微弱な紫外線LEDを使用し、硬化用紫外線照射による強大な蛍光放出や外乱光と微弱な蛍光信号を区別するため、センサーから出る微弱な紫外線の照射はパルス変調をかけ受光部でフィルタリングする事で信号抽出を行っています。

 

実験用や、研究開発用途の場合は簡易ステージにセンサーを取り付けて使用する場合が多いのですが、生産ラインで運用する場合は、ロボット又は自動XYステージ等に取り付けてライン運用もされています。また、センサー自体約900gと軽量なため、実際の生産現場へ組み込むことにより運用いただいている実績も多々ございます。

 

.用途事例

UV硬化樹脂が使われる全分野が対象になることは言うまでもありませんが、具体的には、レンズ接着等のUV硬化接着、高機能フィルム生産分野、携帯電話、有機EL、薄膜コーティング、レジスト等で幅広く運用いただけます。

 

かねてより工業用高機能フィルムの生産工程で多用されてますが、近年はUVコーティング、封止剤、接着剤での運用も増大ており、今後ますます競争力が必要な高機能分野での活用が期待されている手法です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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